なぜエクソソームが注目されているのか

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30年以上前に最初に発見されて以来、エクソソームは多くの疾患研究や標的治療薬の研究などの領域において注目されている。細胞間の「運び屋」であるエクソソームは、細胞膜結合性構造を有し、タンパクやRNAや脂質など複数種の分子の輸送を担っている。
本報では、リキッドバイオプシー、再生医学、創薬の研究領域において、エクソソームが昨今注目を浴びている理由について、要点を述べる。

リキッドバイオプシーにおけるエクソソーム

がん診断においては、組織生検によって診断に関わる重要な情報を解析し、最適な治療法を選択することとなっている。しかしながら、患者の健康状態や腫瘍の部位などの要因によって、組織検査に十分な組織が採取できないケースが多い。
リキッドバイオプシーは、そのようなケースにおいて組織生検の代替手法となり得る。また、非侵襲的であることも利点である。リキッドバイオプシーは、血液や尿などの生体液から循環腫瘍細胞(CTCs)、細胞遊離DNA(cfDNA)、エクソソームの3種類の分子から腫瘍バイオマーカーを検出する。多くの場合、リキッドバイオプシーは従来の組織生検で得られる情報と変わりなく、臨床医が疾患治療マネージメントを行うに当たって適時正確な判断を下すことが出来る。
がん細胞は、循環血中にエクソソームを放出するため、転移情報を示唆するとともに診断と治療の指標となる。以下3点は、エクソソームの医学的特徴である。


  • タンパク質とRNAを含有するので、由来する細胞の状態を反映する
  • 細胞膜結合性構造を有するので、循環中に劣化しにくい
  • 生体液から非侵襲的に得ることができる


膀胱がん診断のためのエクソソームバイオマーカー: 膀胱がん患者の尿中エクソソームやその他の細胞外小胞のRNAとタンパクが疾患マーカーとしてプロファイリングできている。膀胱がん患者の尿中細胞外小胞を標的とした研究において、健常者とがん患者で統計的有意差があるという結果が報告されており、細胞外小胞が膀胱がんのバイオマーカーになり得ることが示唆されている。他の研究では、循環細胞フリーの尿中マイクロRNAのプロファイリングによって膀胱がんのステージ診断が感度・特異度共80%で検出可能であることが明らかになっている。さらに、膀胱がん患者と健常者とによる尿中エクソソームのタンパク質プロファイルと他の細胞外小胞との比較研究では、膀胱がんの予後マーカーや診断マーカー候補で発見されている。

乳癌診断のためのエクソソームバイオマーカー:エクソソームによって運ばれるタンパク質やマイクロRNA、長鎖ノンコーディングRNA(IncRNA)などは、乳癌の予後マーカーや診断マーカーとして積極的に研究されている。これらのマーカーは、乳癌のタイプやステージに応じて特異的に発現する。例えば、ミトコンドリア機能を制御する血清エクソソームに含まれるSH3GL2 と MFN2 は乳癌とリンパ節転移に関与する。また、エクソソーム由来miR-101 と miR-372は、健常者と比較して乳がん患者では血清中の存在量が有意に上昇する。GASSと命名されたエクソソーム由来IncRNA は、ある種の乳癌セルラインにおいては凝集様が見受けられる。

前立腺がんのためのエクソソームバイオマーカー: 現在では、侵襲的な組織生検が前立腺がんの診断法として最も確かなものであるが、エクソソームを用いた診断はそれに代わる信頼のおける非侵襲的な診断法として期待されている。血清や尿中エクソソーム由来のいくつかのマイクロRNAs、IncRNAs やタンパク質は、前立腺がんの診断と治療方針を決定する有用なバイオマーカーであると考えられている。例えば、血漿中エクソソーム由来のマイクロRNAs であるmiR-1290 と miR-375は、去勢抵抗性前立腺がんの予後を予測する有力なバイオマーカーであると考えられている。前立腺がん細胞由来のエクソソームタンパク類からもexportin-1、 Notch3、PCA3,、そしてLAMTOR1のような有用なバイオマーカーが同定されている。


再生医療におけるエクソソームの活用

再生医療とは、心筋梗塞や急性腎障害や変形性関節症のような広範に渡る変性を伴う損傷組織の再生を目的とするアプローチの総称である。幹細胞移植は代表的な再生医療の方法であるが、細胞が肺を栓塞する、宿主が拒絶反応を示す、腫瘍を誘起するといった懸念点もある。


エクソソームを活用する再生医療では、これらの課題を解決することが期待される。間葉系幹細胞(MSCs)は、MSCsの生理活性と類似する作用と持つエクソソームを放出する。エクソソームはMSCsと比較し、(1)安全性が高い、(2)低い免疫原性、(3)肺を栓塞せず標的臓器に到達しやすい小さなサイズ、(4)腫瘍を形成しないなどの理由によって高く評価されてきている。


いくつかの前臨床研究では、MSCs由来エクソソームが再生医療に適用できる可能性を見出している。黄斑変性症は加齢による変性症であり、網膜に斑点が生じる傷害によって起こる。モデル動物を用いた実験では、MSCsもしくはMSCs由来エクソソームの移植によって網膜の傷害を低減し、レーザー傷害によるアポトーシスを抑制することが示されている。現在、この効果が臨床応用に転用できるかどうかの臨床試験が進められている。

創薬におけるエクソソームの役割

エクソソームを利用する薬物送達システムは、安全かつ特異的で、安定して生体分子を送り届けることが出来る能力を有していると考えられる。以下に紹介するエクソソームの機能を考えれば理想的な薬物送達システムの候補といえる。

  • 高い特異性: 固有の前駆細胞由来のエクソソームは、内包する生体分子を固有の標的細胞に届けることが出来る。
  • 微小なサイズ: サイズが小さく、生体由来のため、エクソソームは貪食細胞から影響されずに細胞膜と融合し、リソソームによる貪食からも逃れられる。
  • 低い免疫原性: エクソソームは生体由来なので強い免疫反応を起こさない。
  • 高い安定性: エクソソームは血液のような体液中で安定に存在する。
  • 水溶性中心構造: エクソソームは水溶性中心構造を有するので、水溶性薬物と相溶性がある。
  • 表面結合性: エクソソームはその表面に様々なタンパク質やペプチドを結合させることが出来る。それにより治療薬の送達をより効果的に改善できる可能性がある。

また、エクソソームは血液脳関門(BBB)を通過することができるので、他のナノテクノロジーによる薬物送達システムと比べ、大きな優位性を有する。動物を使ったパーキンソン病モデル実験においては、強力な抗酸化酵素であるカタラーゼと一緒に投与されたエクソソームは、BBBを通過し脳全体に広がり、治療有意性が観察された。
これらの実例は、エクソソームバイオロジーとその臨床応用例に対する期待の高まりを表わしている。将来、この「小さな運搬人」が広範な疾患のメカニズム解明と治療法の開発に大いに役立つであろう。

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